次世代ウェブ グーグルの次のモデル
- 作者: 佐々木俊尚
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2007/01/17
- メディア: 新書
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帯に「Web3.0」なんて言葉が書かれていたので、ちょっと心配していたのだが、内容はまったく違ったので一安心。本文中で Web3.0 という言葉が用いられているのは一節だけでしかも引用とそのコメントだけであった。
「Web3.0が登場するとすれば、それはインフラも情報処理もピアに分散してユーザー側でコントロールするP2P型だろう」
これは卓見である。
概ね同意である。さらに付け加えるなら、Web ではなくインターネットの活用であり、ネットワーク越しに通信が行われていることを意識しなくなっているだろう。 Web3.0 の "Web" はもはや飾りでしかなくなっている。そこにどういうビジネスモデルが出現するのかは興味深い。
しかし、上記はあくまでも予感である。いまの現段階(エンタープライズな領域での考え方の活用が始まってきたばかり)で、「Web3.0 はこうだ」と論ずるのはマユツバものでしかない。
冒頭に Web2.0 のパラダイムの結論として以下のように書かれている。
Web2.0というパラダイムは、極大化されたデータベースの海と、そこから的確に有用なデータを拾い上げるための「UFOキャッチャー」アーキテクチャという二つの層からなっている。
--中略--
ネットの世界からデータを拾い集める方法として、すでにさまざまな方法が考案されている。
--中略--
しかし検索エンジンだけですべてのデータを補足できるわけではない。
これでは言葉足らずである。「すでに存在するデータを拾い集めてくるアーキテクチャ」と誤解されかねない。かく言う私も読み始めはそのように受け取ってしまった。
Web2.0 では拾い集めるアーキテクチャと同時に「生み出すアーキテクチャ」も重要になる。もっと正確には「ユーザーに生み出してもらうアーキテクチャ」となる。ソーシャルブックマークを例に取れば、ユーザーにブックマークを登録してもらうこと(拾い集める)だけが重要なのではく、その登録してもらったブックマークをもとに何か(たとえばコンテンツマッチング広告やユーザーの趣味趣向などのデータ)を生み出すことも重要になる。
生み出すことによって新しいサービスの構築や、新しい知を創造することができる。それをユーザーに開放することで、さらに何かを生み出すための情報を集めることができる。つまりフィードバックループが形成されるのだ。このフィードバックループを作り出せるアーキテクチャこそが Web2.0 のもっとも重要な部分である。もちろん、本文中には UGC という言葉などと同時に、さまざまなところでデータをいかに活用するかが重要であると書かれている。
しかし、いつ読んでも佐々木氏の文章はスリリングで楽しく読める。