欲望解剖
- 作者: 茂木健一郎,田中洋,電通ニューロマーケティング研究会
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/12
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 5回
- この商品を含むブログ (30件) を見る
欲望という言葉をキーワードにしたマーケティングの本。茂木氏と田中氏でそろれぞれの章があり、そして最後にお二方の対談の章があるという3部構成。
茂木氏の章では脳という観点から欲望について紐解き、それをどうマーケティングに活かすかが書かれている。なかでも特に印象に残ったのは以下の点。
脳は規則性の押しつけを非常に嫌う。半ば予想ができるけれども、半ば予想ができないという要素を入れておかなければ、脳を惹きつけることはできません。
また、同様の事を以下のような言葉でも表現されている。
脳は適切な文脈で提示された不確実性を喜び、またそれに対してアディクションを起こす
一言で言ってしまえば、意外性のことだ。いわゆる、かゆい所に手が届いたとういう「隙間商品」というものがいい例なのかもしれない。「おぉ、そうきたか。」という感じ。意外性のさじ加減が非常に難しいとは思うが。
田中氏の章では「根源としての欲望」という考え方が非常に興味深かった。それについて一部引用させていただく。
人間が欲望を持つのではなく、人間以前の存在、欲望そのもの、カオスのようなものがあるのだというのです。
ーーーー中略ーーーー
欲望が先にありきで、そこからさまざまな差異が生み出される。たとえば、欲望が胃袋と連結すれば食欲になって現れてくる。
引用にも出てくる胃袋についてもう少し詳しく考えてみる。もし仮に人が食べることが必要が無いとすれば、胃袋も必要が無くなる。胃袋がないとすれば食欲もない。食欲がないとすれば胃袋も無い。しかし、人は胃袋を持っている。胃袋があるから食欲もある。逆もまた真。胃袋と食欲の関係は鶏と卵の関係になる。しかし、両者のいずれが先であろうと、生まれ出るための「何か」が必要である。それは何か。それはつまりカオスのような「根源としての欲望」である。なるほど。
欲望が先にあるということは、一般的によくある「いかに消費者に興味を持ってもらうか」という欲望を引き出す手法は通じなくなる。引き出すもなにも、欲望はすでにそこにあるからだ。その点についても、「なぜ欲望を抑止するのか、どうすれば抑止しないのか」という観点で考える必要があると示唆されている。非常に興味深い。